
バイセクシュアルの小さな夢。
バイセクシュアルと自覚したのは15歳のころで、それまでは自分がレズビアンだと思っていた。
初めて恋をした相手は女の子だった
初恋の相手は同級生の女の子で、彼女のために生きようと思い、彼女を養いたくて進路を決めてきた。もちろん彼女は私の恋愛感情を友情だと思っていたし、私は彼女に告白するつもりもなかった。
15歳の頃、男の子に告白されて”まぁ、いいや”とノリで付き合い始めたとき、私は彼女を裏切ったと思った。
実際には、彼女は私のことを祝福してくれた。そして私は彼氏がいるくせに、傷ついた。「この子は本当に私を友達としてしか思ってなかった」ということを知らされて。今思えば身勝手な話だ。
女性と恋愛をすることは諦めてきた
バイセクシュアルの肩身は狭い。LGBT(性的マイノリティの略語。頭文字はレズビアン/ゲイ/バイセクシュアル/トランスジェンダーを表す)の中でも、最も排斥されやすい。
女性しか愛さない、男性しか愛さないという性が圧倒的に多い中で「両性愛者」は異性の相手を選ぶことで世間体を守ることもできる”いいとこどり”の気配がある。私自身、圧倒的にゲイ・ビアンの人に比べて世間と戦ってきたものが少ないと思う。
しかし、だからこそ私はノンケの女性を愛しても仲良くしたり、ましてや告白して付き合ったりということを諦めてきた。
たとえ相手がビアンで、私に興味を持ってくれても、それは「ビアンの人が持っている数少ないパイを奪う」ように思われた。今書いていても傲慢な話だと思いつつ。
私の中で、女性との恋愛は「怖いこと」になっていた
例えば今私が恋している人は男性だ。相手に魅力を感じていることは間違いないが、「同性を選ばないようにする力」が皆無だったと言える自信はない。
私はレズビアンのパートナーを持つことでビアンの世界から女性を奪ってはいけないし、「バイセクシュアルだから男性を選ぶことが一番世間と摩擦がない」と思った。
その結果、バイセクシュアルが最も嫌われるところの「いいとこどり」に落ち着こうとしている。
結局男性とパートナーになりたがるのはなぜ、という質問に「いや、女性で私を選んでくれるような相手がいなくてさ」とヘラヘラやり過ごしてきた。しかし、本当は私を選んでくれそうな女性からは、走って逃げていた。私を選んで彼女に得があるはずもない、と思っていた。
そうして気づけば、当初の初恋の相手も、私から離れていた。私がバイだとどこからか伝わったのかもしれないし、私の性的な目線に気づいたのかもしれなかった。(恋してない相手からの性的な目線って気持ち悪いものだしね)
それでますます女性との恋愛が怖くなった。
今の私には、ささやかな夢がある
そのあと、男性のパートナーがいるときでも、女性を家に上げるのが怖くなっていった。
恋愛対象でないのに彼女がそう思ったらどう思うだろう? パートナーが浮気だと思ったらどうしよう? パートナーは私が女性を家に上げてもなんとも思わないのに、同じように恋愛対象の男性を家に上げると怒るのはなぜだろう?
そうしてなんだか私は誰かと二人きりが怖くなり、家は一時誰も入らない空間になった。
そんな私のささやかな夢は、いつかバイの人たちと何も気にせずお茶をすることだ。
ビアン・ゲイの方から向けられる「どうせあなたはマジョリティの側でしょ」という目線も、「まさかあなたが私を性的に見てるかもしれないなんて」という怯えにも疲れてしまった。
そんなに誰も愛せるはずないよ、だって心が狭いもの。と思いながら、いつかいつかのお茶の間を夢見ている。